オン ザ ソファ

一人きりで暮らしているから、どうでもいいことを聞いてほしい

待てば海路の日和あり

 

意外にも引きずっている。失恋をだ。

どれくらい引きずっているかというと、元恋人と旅行に行ったときの夢を見て、「あれ、別れたんじゃなかったっけ?…なんだ勘違いか、勘違いでよかったー!」と思ったところで目を覚まし、朝からシクシク泣くくらいに引きずっている。フラれ方が面白めだったのでそんなに引きずらないと思ったのだが、そうでもなかった。

フラれた翌々日以降、なるべくこのことについては考えないようにしてきたが、実際のところ、一旦この現実としっかり向き合った方が良いのだろうか?いや、絶対に嫌だ。まず良い気分にはならないし、何より時間の無駄だ。失恋したとき、私はなぜフラれたかをくよくよと考える癖があるが、これは体力を使うわりに本当に意味がない。答えは出ないし、出たところで、それを素直に飲み下せるはずもないのだ。

 

なぜフラれたかをくよくよ考えるということは、『フラれた理由がよくわからない』ということである。交際相手をフる理由なんて大半が【他に女・男ができた】に集約されるはずだが、しかしそのことをハッキリ口に出す人はあまりいない。そしてハッキリ言われなかった場合、フラれた側はその可能性をなるべく考えないようにしながら(何故なら復縁の希望が捨てきれないから)、メソメソとフラれた理由を考察し続けるのだ。

また一口に【他に女・男ができた】と言っても、そこに至るまでの経緯を細かく見れば、そのバリエーションは多岐にわたる。たとえば、交際相手が自分の理解できない趣味に大金を注ぎ込んで貯金を疎かにしていたり、食事のマナーをいくら注意しても「大したことじゃないでしょ」と直さなかったりする【価値観の違い】であるとか、交際相手が嫉妬深かったり、逆にこちらの嫉妬を煽るようなことばかりしてきて【もう疲れた】だとか、あるいは単純に【飽きた】とか。そういうのが積もり重なり目移りし、最終的に【他に男・女ができた】となるのだろう。知らんけど。

そんな細かい理由を知るくらいなら、よくわかんないけどフラれた、という状態のままの方がいい気がする。上に挙げた細かい理由についてもし面と向かって語られたところで、「でも、それが私だし!」と開き直るか「わかったもうやめる!」とその場では言っておいて結局何一つ直さないかの二択である。絶対そうである。だから意味がない。

そして『意味がない』だけで終わる場合はまだ良い。もし細かい理由が【なんだかんだ見た目がキモい】とか【仕草がキモい】とか【愛情表現の仕方がキモい】とかだったら、もう、開き直るパワーすら残らない。聞いた瞬間、心肺が停止して死ぬ。そして理由がよくわからなかったときの800倍落ち込む。

 

私は元恋人(この元恋人という言い方もなんだか未練たらしいので、以後彼のことはハリネズミくんと呼ぶ。髪型が似ていた)に『学業が忙しくなるから』と『実際そんなに好きでもなかった』のダブルパンチをくらってフラれたわけだが、(結局、他に女でもできたんだろうな)とすぐに断じて、それらの理由を掘り下げることはほとんどしなかった。問い詰めてもっと詳しい理由を聞き出したとして、受け止められる自信がなかったからだ。逆を言えば、【他に女ができた】だったら受け止められると思った。

もともと人の気持ちなんて変わって当たり前、というのが私の持論であるし、ハリネズミくんに浮気性な部分があることは交際する前から知っていた。それに彼はまだ学生であり、周囲には現役の女子大生がよりどりみどりいて、近くの女子大生と遠くの頭文字D(AT限定)なら前者を選ぶことはそれほどおかしなことでもない。

こうしてハリネズミくんを悪者にして、茶化して、フラれたことを笑い話にすることで、私はようやく気にしてない、という気になれた。しかし先日の夢の中、楽しい旅行の思い出の中で、私は彼と別れたことが勘違いであった(と勘違いした)ことが心の底から嬉しかったのである。もはや言い逃れはできない。私は彼が仙台に来てくれたあの日から一歩も進んでいなかったのだ。

 

またしばらく引きずるのか、と暗澹たる気持ちでいっぱいである。また我武者羅かつ闇雲な恋愛活動を行って気を紛らわせたいところだが、その気になることもしばらくはできなさそうだ。今はただNetflixを見て、おいしいものを食べて、私自身の気持ちが変わるのをひたすら待とう。

待てば海路の日和あり。これも私の持論である。

 

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