オン ザ ソファ

一人きりで暮らしているから、どうでもいいことを聞いてほしい

愛の深さの測り方

 

 

 

 (noteの #ファーストデートの思い出 というお題ハッシュタグに寄稿した記事です。)

 

 

 

 

 

 はじめに、これから語るのは “ファーストデートの思い出” などというレモン色のテーマには全くそぐわない内容であることを宣言しておこう。甘酸っぱさなどどこにもなく、さらに言えばデートの話ですらない。が、私が話したくなったので、話す。まぁ、味変か何かだと思って聞いてほしい。

 

 当時の私はまだ初心(うぶ)で幼気(いたいけ)な都会に出たての女子大生であり、その日は人生で初めて出来た彼氏と初めてのセッション(隠語)を行うために、初めて風営法管理下の宿泊施設を訪れていた。初めてのことの目白押しで大層緊張していたものの、インターネットを駆使して入念な予習と下準備を済ませていた私は、土壇場で怖気づくような醜態を晒さぬよう覚悟を固めつつ、宿泊施設への道を一歩、また一歩と踏みしめていった。

 しかし、忘れもしない。入り口の前にある小さな階段を少し上ったところで、彼は突然立ち止まり、私を振り返って、言った。

 

 「これって言っていいかわからないけど……このホテル、元カノと来たことある」

 

 さすが、この私が惚れた男である。朝の挨拶が『サノバビッチ』の小学校を出ているとしか思えない豪胆ぶりだ。

 怒るより先に、困惑した。今カノの前ではいついかなる時も出してはいけないとされる『元カノ』の話題を、よりにもよって最悪のタイミングで、しかも最低のトッピングまで添えてサーブしてきた彼の意図が全く読めなかった。「もしかして、乗り気じゃないのかな?」と思った。車で来た道中、ブレーキランプ5回点滅カ・エ・リ・タ・イのサインを見落としていたのだろうか。でもそんなの、助手席にいた私にわかるわけもない。

 怒るタイミングを完全に逃した私はとりあえず「あー、じゃあ、スムーズに入れるね」とだけ言ってその場を濁し、以降その件は水に流して忘れることに決めた。きっと彼も緊張していたのだろう、あんな失言、さすがに二度と出ないだろうと、そう思った。そう思った私は、甘かった。

 

 「あのホテルにも行ったことあるよ。奥まったところにあって、迷っちゃった」

 

 「そこのホテルで元カノがヘアアイロン使ったら、ブレーカーが落ちてビックリした」

 

 その後何日も経たないうちに、彼はさらに2度、つまり1度目を含めて合計3度、私の前でラブホ小話(with 元カノ)を披露してくれた。

 2度目のときは、まさか2度目があると思っていなかったため再び面食らってしまい、またもや怒ることができなかったのだが、3度目ともなれば心の方も準備万端、満を持して私は激ギレし、それを受けた彼が潔く「悪気はなかった。全面的に自分が悪い」と謝罪したことで、この一件はようやく幕を閉じた。そしてその後彼と別れるまでの間、彼が元カノの話をすることは二度となかった(ちなみに最後は私がフラれた)。

 

 今になって思うに、彼はおそらく、嫉妬を煽ることで私の愛情を確かめたかったのではないだろうか。

 

 少なくとも、「悪気はなかった」というのは嘘だと思う。本当に悪気なくあの話ができるほどにデリカシーがない者なら、普段からゴミをポイ捨てしたり人前で屁をこいたりしていてもおかしくないと思うのだが、彼はむしろ公共マナーをきちんと守り、周囲の人への配慮をかかさない人だった。また本当に、『元カノとラブホ』の話を聞いた今カノの反応を予測できないくらい馬鹿であるなら、きっと一度怒られたくらいで言動を改めるような学習能力もないはずである。

 したがって、彼は私が怒るとわかった上で例の発言に及んだのであり、その動機として最も違和感がないのが、「嫉妬させたかったから」だと思うのだ(発言の内容とタイミングのあまりの最悪さから、『あの場で即座にフラれたかった』という線も未だ捨てきれずにいるが)。

 

 周りを見ていると、こういうジェラシーでしか愛を測れない人たちは、結構いるらしい。

 そういう人たちはみんな自己肯定感が低くて、卑屈で、自分が嫌というほど味わってきた嫉妬を自分に向けられることでしか、愛を実感できないのだ。でも彼らが愛だと勘違いしているそれは実際のところチャチで小汚い優越感でしかなく、自分を好きだと言う人に嫌な思いをさせて自尊心を満たそうとする彼らはやはり、相手のことを愛しているわけではないのだろうと思う。

 負け犬ども、卑しい愛のフリーライダー、一生自分の乳首だけ弄っていろ。こういう人間にかかずらう時間は全てが無駄である。とっとと別れて他の相手を探すのが正解だ。

 

 以上、25歳独身派遣OLの小さな思い出話である。世界中の恋人たちへ、中指を立てて。

 

 

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