試食販売のお仕事に、興味を持ったことはありますか?ニコニコ顔の売り子さんが、小さく切ったソーセージやお菓子を「お一ついかがですか?」なんて言ってすすめてくれる、あのお仕事です。
きっと大抵の人は、興味を持ったことがないどころか、『仕事』として気に留めたことすらないでしょう。すすめられたソーセージを受け取るとき、人は大体 ソーセージ → 虚空(咀嚼中)→ 爪楊枝捨て しか見ていません。そしてすすめられたソーセージを断るときも、気まずさからかなるべくソーセージ周辺を視界に入れないようにします。そのため、本当にほとんどの人は、試食販売の売り子に注目しないのです。
時給は?服装は?あのお仕事について、あなたはどれくらいのことを知っていますか?
どうでしょう。ポピュラーなのにミステリアスな、この試食販売というお仕事に、少しは興味が湧きましたか?まぁ湧いていないでしょうね。みなさんのシケたお面(ツラ)が目に浮かびます。でも、関係ありません。私は大学1年生の頃、この試食販売のアルバイトをしていたので、今回はそのときのことが話したいのです。ここはオンザソファ、そういうスタンスのブログです。
手始めに、基礎的な知識からお話ししていきましょう。
試食販売のアルバイトを始めたいと思ったら、まず、試食販売専門の派遣会社にスタッフとして登録される必要があります。あのお仕事はスーパーマーケットの店員ではなく、その日限りで派遣されてきた外部の人間が担当しているのです。
スタッフは事務所から紹介された仕事を、日給や勤務地によって選びます。イベント会場のスタッフと同じで、一日がかりの仕事ですから、報酬は時給ではなく日給です。相場は大体8,000円~9,000円くらいだったと思います。
アルバイト当日、スーパーに着いたら、まず派遣を依頼した責任者の方にご挨拶をします。そして売り場での立ち位置や試食の出し方などを一通りうかがったら、バックヤードで準備を整えて、店頭にて試食販売を行います。勤務時間が終わったら、後片付けをして再び責任者の方にご挨拶し、必要な書類に判子をいただいてお仕事完了です。
さて、業務内容のアウトラインをさらりと説明しましたが、今お話しした中で、スタッフが最も力を入れるべき部分は、どこだかわかりますか?
『試食を配る』部分だと思ったそこの貴方!
愚の骨頂です。いちアルバイトが何をいくら売り上げたところで、一文の得にもなりません。ゆとりある心 と100回書いたのち、’90年代に生まれ直しましょう。
バックヤードでの準備や後片付けも、手際よく仕事をしてさっさと帰るために大切な工程ですが、一番のポイントではありません。
試食販売のアルバイトで最も力を入れるべきポイント……それはズバリ、『仕事選び』です。
仕事の紹介を受けるとき、スタッフは事務所から以下の情報をもらいます。
①店舗名
②場所(地域)
③扱う商品
④日給
最も注目すべき情報は、①の店舗名です。正確には、店舗名から推測できる『そのスーパーの規模』が、試食販売のアルバイトを選ぶ上で、最も重要な情報となります。
試食販売で派遣されるスーパーマーケットは、2種類あります。『大きいスーパー』と『小さいスーパー』です。イオンモールやイトーヨーカドー、ダイエーなどの、いわゆるショッピングセンターに入っているスーパーが『大きいスーパー』で、マルエツやエコス、ヤオコー、いなげや、西友、フレスコ、玉出、マルヤス、アプロ、ピーコック、コノミヤ、ライフ、ヨークベニマルなどなど(知っているスーパーを片っ端から並べてみました。ご存じのものはありましたか?)、スーパーだけのスーパーが『小さいスーパー』です。
大きい方か小さい方か、どちらのスーパーが良いのかというと、それは断然小さい方です。小さい方が良いと言うより、大きい方に問題があると言った方が正しいかもしれません。
試食販売アルバイトの一日を軽くおさらいしましょう。責任者に挨拶→準備→試食販売→片付け→責任者に挨拶(判子をもらう)で、終了です。
小さいスーパーでは、この一連の流れをほぼ滞りなく遂行することができます。
しかし大きいスーパーではまず無理です。何故かというと、イオンやヨーカドーのバックヤードで働く人々は、誇張なく、クソが付くほどお忙しくていらっしゃるからです。責任者の方に挨拶したり判子をもらったりしたくても、なかなか捕まえることができません。朝はともかく、夕方に捕まらないと、判子をもらえず帰れないのでとても困ります。東大和のイトーヨーカドーの裏で2時間待たされたときは、シンプルに泣きました。
また①には劣りますが、②の場所(地域)もなかなか重要な情報です。お金持ちの多い地域で試食販売をするのも、あまりおすすめできないからです。
JR国立駅前の西友でアメリカ産牛肉の試食販売をしたときは、誰も試食を取らない上、隣の国産牛肉ばかりが売れていくので、絶望で目の前が真っ白になりました。お金持ちは試食やお買い得商品というものが、それほどお好きではいらっしゃらないようです。
文句ばかり色々言いましたが、試食販売は、結構楽しい仕事です。地元のヤオコーで焼きそばを売ったときは最高でした。老若男女色々な方が集まって、私が焼いた焼きそばを喜んで食べてくださりました。その人気ぶりときたら、試食の用意が終わって次の分を焼いている間に、試食待ちの行列ができていたほどです。
「さすがにどうなの」と若干引いたのも事実ですが、やっぱり暇でいるよりは、それくらい人が来てくれた方が楽しいのです。商品が買ってもらえなくても、いちアルバイトとしては痛くも痒くもありませんが、おすすめした試食を「結構です」と敬遠されると、やっぱり少しは傷付きます。
ですからみなさんも、「お一ついかがですか?」なんて言って一口サイズの食べ物を差し出されたら、ぜひ恥ずかしがらずに受け取って、できれば笑顔で召し上がってくださいね。
……以上である。スランプに入ったか、普段の口調で上手く話せず、たまにはお上品に振る舞うのも悪くなかろうと思って試してみた。実際悪くはないが、私がこのブログで一番やりたいことは『熱弁』であるため、慣れないですます調でそれをやるのは、結構難しいものだ。
次回は普段通りの私の口調で、この試食販売のアルバイトを始める直前に起きた、とある事件についてお話ししよう。
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