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おとなちゃれんじ ~Vtuber採用面接編~

 2024年は挑戦の年にしよう!

 ──────なんて殊勝なことを考えているわけではないが、ブログのネタというものは天から降ってきたりしないため、今回はVtuberの採用面接を受けてきた。

 

 動画を配信するアカウントと、自分用のアバターさえ用意すれば、個人でもVtuberとして活動することはできる。しかしまとまった金を稼ぎたいと思うのであれば、芸能事務所のようにVtuberをプロデュースしてくれるVtuber事務所に所属した方が確実である。有名どころだと、壱百満天原サロメ嬢を擁するにじさんじだったり、宝鐘マリン船長が所属するホロライブなんかがある。

 

 事務所に所属するVtuberになるまでの流れは、一般企業の就職活動とあまり変わらない。一次審査(書類)→二次審査(面接)→配信テスト(事務所によってはやらない)→採用といったところである。私が受けたところもそんな感じだった。

 

 

 

 結論から言うと面接には落ちた。

 が、多分あれは、厳密には面接ではなく『勧誘』だったのではないかと考えている。

 

 

 

 大抵のVtuber事務所では、一次審査(書類審査)として個人情報および志望動機、活動実績を書かせ、そして自己PR動画の提出を求めてくる。

 社会人の中途採用になぞらえて考えると、おそらく最も重要視されるのは活動実績だ。例えば既に個人で歌ってみた動画を配信していてチャンネル登録者が数千人いるだとか、絵が得意でTwitterのフォロワーが数万人いるだとか、そういうものだ。

 事務所側で設定している水準以上の活動実績がある者のうち、人間性・社会性に明らかな問題がなさそうな者(志望動機がちゃんとしてるかとか、攻撃的な言葉を使っていないかとか)、活動実績と自己PR動画の内容に矛盾のない者が、一次面接を通るのではないだろうか。

 

 で、肝心の私にそういった活動実績があるかというと、ご存じの通り、ない。一昨年から去年にかけて個人でVtuberをやっていたがチャンネル登録者数は70人くらいだったし、Twitterのフォロワーは現在255人である。

 そんな私が、どうやって一次審査を突破し、面接まで進むことができたのか? ──────なんということはない。単純に、活動実績を訊かれなかったのである。

 

 一次審査の必要項目を埋めている時点で「おかしいな」と思ったのだが、その事務所では、他の事務所だと必ず提出を求められる情報の多くが求められなかった。そして提出した翌日には一次審査通過の連絡がきた。

 私の文章力と京大ロンダの学歴がここにきて火を噴いたのか……?と思わないでもなかったが、いちおう面接の予習も兼ねて、志望事務所の運営会社について調べたところ、その会社が“Vtuber志望者向けのサービス”を提供していることがわかり、「あはぁ」と声が出た。

 

 そして面接当日。感じのいい担当者とのやり取りは和やかに進んだ。内容も、序盤に「月にいくらくらい自由に使えますか?」という色んなものが丸出しの質問があった以外は ほぼ一般企業の採用面接と変わらず、事前に企業向け採用面接・質問回答集で予習していた私に隙は無かった。Vtuber事務所だし一発芸のひとつでも求められるかと思い腹話術を練習し、傍らにエルモ(セサミストリート)のパペットを用意して面接に臨んでいたのだが、そっちはすっかり無駄になった。

 

 そして面接の最後、私は面と向かって不採用を言い渡された。

 まさか面接中に言われるとは思っていなかったので意外に感じたが、少し考えてから納得した。勧誘とは、必ず顔を見ながら行われるものだ。

 

 「あなたは熱意もあって、個人的にはすごく良いと思うんですけど、やっぱり活動実績がないと厳しくて……うぅーん。 でも、見込みがあるし、どうしようかな……」

 

 と、なんとも悩まし気なジェスチャーの後、担当者は例の“Vtuber志望者向けのサービス”のことを紹介してくれた。そして「サービスを購入するか否かの返答はあまり長く待てないので、〇〇時間以内にお願いします」との言葉を最後に、面接は終了した。

 

 困っている人に、特別なチャンスを提示して、決断を急がせる。おとなの進研ゼミこと闇金ウシジマくんでも見た、典型的な勧誘である。

 

 多分、一次審査は志望者の熱意を測るフェーズ、そして面接は熱意のある者のうち、活動実績がある者を『候補者』、ない者を『お客様』に分けるフェーズだったのだろう。活動実績の有無を採用基準に組み込むのであれば、書類審査の段階で訊いた方が効率が良いが、集客を兼ねているとなれば話は別だ。

 

 私はVtuberにそれほど詳しくないが、こういった面接と勧誘を併せて行う商法はこの界隈だとあまり聞いたことがなかったので、Vtuber業界も混迷を極めてきたなぁという所感である。

 

 やはりウェーブがビックになりきってから乗ろうとするのは良くない。頂は高く道のりは遠く、膨れ上がった潮流に飲み込まれて顔を出すことさえ難しい。

 やはりまずは自分の得意なジャンルで小さな波を乗りこなし、その優しいさざ波をいくつも集めて、世の中を巻き込む奔流へと成長させていくのが、少なくともいきなりデカい波に挑むよりかは堅実な道なのだろう。

 

 というようなことを私は数年前からずーっと言っているが、結局、いまだに実を結んだものは一つもない。このおとなちゃれんじも今回で第三弾になるが、今のところ『やったことある』が増えていくだけで、何も手に入れることができていない。

 

 私に足りない部分があるとすれば、それは、志を同じくする人間たちとのコミュニケーションである。絵描きは絵描きと繋がるし、字書きは字書きと繋がる。クモの巣よりもびっちりと張り巡らされたインターネットは世界中と繋がっているはずなのに、私は頑なに同志と繋がることを拒んできた。

 

 プライドが高いからだ。

 そして怠惰だからだ。

 

 自分のユーモアがピカイチだと信じているし、どこの馬の骨とも知れない他人に足を引っ張られて、私までつまらない奴と思われるのが嫌だったからだ。

 絵が描けることが、文章が書けることが普通の世界に足を踏み入れたら、反りの合わない同志にこき下ろされて嫌な思いをするかもしれないからだ。

 それにずっと続けていれば、いつか誰かがきっと見つけてくれるはずだなんて、一世紀前のディズニープリンセスみたいなことも考えていた。

 

 でも、そこから成長すべき時が来たのだ。まず売るべきは作品でなく、『源カイバ』なのだ。どこの馬の骨とも知れない私の作品を見てくれる人間は多くない。私はずっとつまらない奴未満の存在だったのだ。まずはそこを脱却しなければならないのだ。

 

 三月に、学生時代の友人が一次創作の同人イベントに出店するのを手伝ってきたが、あれは『物を売る』よりも『繋がりを作る』のに適したイベントだと感じた。自分と同じ活動をしている人間と会って話し、情報交換をする。それだけでも大きな価値がある。私も今度ああいったイベントに、X(旧Twitter)にアップしているお団子女や赤ちゃんパンダのグッズを携えて参加してみたいと思う。あと、TRPGの野良オンラインセッションとかにも参加して、同じ趣味の友だちを増やして、自作シナリオのフィードバックを貰える機会を増やしていきたいと思う。

 

 とにかく、顔と声を使って、自分自身を広めるのだ。自分をのことを一つ知ってもらうために、相手のことを二つ知るのだ。多分それが、凡才のソーシャルアニマルが花を咲かせるための第一歩なのだから。

 

 

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